犬に関する法律で代表的なものには「狂犬病予防法」「動物愛護法」などがあります。
一飼い主が、そのひとつひとつを完璧に熟知していないといけないのかと言われると、それはさすがにナンセンスですが、犬を新しい家族として迎え入れるならば最低限知っておかなければならないことも当然あります。
そこで今回は、犬を飼うときに絞って遭遇しそうなケースを法律という観点からQ&Aにしてみました。
当たり前と思っていることが、実は法律違反だったということはよくあります。もし興味がございましたら最後までお付き合いください。
もくじ
河川敷で首輪を付けた犬が捨てられていました。このまま飼っても法的に問題ないですか?
一般的に首輪は飼い犬であるということの証拠でもあります。強引に自分のものだと主張すると犬を探すのにかかった費用や精神的苦痛を理由に民事において慰謝料を請求されたり刑事において遺失物横領罪や窃盗罪に問われる可能性があります。
第五章 不法行為
第二百五十四条 遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金若しくは科料に処する。出典:刑法
第四条 拾得者は、速やかに、拾得をした物件を遺失者に返還し、又は警察署長に提出しなければならない。(中略)3 前二項の規定は、動物の愛護及び管理に関する法律(昭和四十八年法律第百五号)第三十五条第三項に規定する犬又は猫に該当する物件について同項の規定による引取りの求めを行った拾得者については、適用しない。出典:遺失物法
3ヶ月たっても飼い主が見つからない場合はあなたの所有物となります。
(遺失物の拾得)第二百四十条 遺失物は、遺失物法(平成十八年法律第七十三号)の定めるところに従い公告をした後三箇月以内にその所有者が判明しないときは、これを拾得した者がその所有権を取得する。出典:民法
また、飼い主が見つかった場合は見つかるまでの間にかかったドックフード代などの費用を請求することが認められていますのでレシートなど証憑書類は保存しておきましょう。
(費用の負担)第二十七条 物件の提出、交付及び保管に要した費用(誤って他人の物を占有した者が要した費用を除く。)は、当該物件の返還を受ける遺失者又は民法第二百四十条(第三条において準用する場合を含む。以下同じ。)若しくは第二百四十一条の規定若しくは第三十二条第一項の規定により当該物件の所有権を取得してこれを引き取る者の負担とする。出典:遺失物法
首輪のない野良犬だったらそのまま飼っても法的に問題ありませんか?
第二節 所有権の取得(無主物の帰属)第二百三十九条 所有者のない動産は、所有の意思をもって占有することによって、その所有権を取得する。出典:民法
また、飼い犬かそうでないかを調べる方法として
- 動物病院でマイクロチップがないか診てもらう
- 保健所に迷子犬の届け出がないか確認する
- ネットや地域のビラなどで探している飼い主がいないか確認する
などがあります。
知人から子犬をもらうことになりました。法的に問題になることはありますか?
子犬をもらってからすぐに先天性疾患が見つかったり、病気にかかって高額な医療費が必要になったとしても、知人にその医療費を請求したり、犬を返すということは基本的にできません。これは民法で贈与者はそこまで責任を負う必要はないと規定されているためです。
(贈与者の担保責任)第五百五十一条 贈与者は、贈与の目的である物又は権利の瑕疵又は不存在について、その責任を負わない。出典:民法
ただし、その知人が病気であることを知っていながら黙って譲渡した場合など悪意があった場合は返すことができます。
ただし、贈与者がその瑕疵又は不存在を知りながら受贈者に告げなかったときは、この限りでない。
出典:民法
ペットショップで購入した犬が先天性疾患を患っていました。法的に返品は可能ですか?
ペットの生体販売は動産の売買契約となります。
引き渡し以前から目に見えない病気にかかっており購入して間もなく死亡したり、先天性疾患など引き渡し以前から重大な問題があり、引き渡し後にそれが判明した場合には、売主には「無過失で負う瑕疵担保責任」が生じ、買主は契約の解除ができます。
契約の解除をする場合は、売主に返金義務が、買主には返品の義務がそれぞれ生じます。ただし、瑕疵の程度が低い場合は買主は契約の解除はできず値引き程度の損害賠償請求になると考えられます。
(地上権等がある場合等における売主の担保責任)第五百六十六条 売買の目的物が地上権、永小作権、地役権、留置権又は質権の目的である場合において、買主がこれを知らず、かつ、そのために契約をした目的を達することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。この場合において、契約の解除をすることができないときは、損害賠償の請求のみをすることができる。(売主の瑕疵担保責任)第五百七十条 売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、第五百六十六条の規定を準用する。ただし、強制競売の場合は、この限りでない。出典:民法
売買契約は口頭でも成立しますがトラブルになると、言った言わないの立証が難しいのでしっかりと書面で売買契約を交わすようにしましょう。
犬の登録は絶対しないといけないって法律で決まってるの?
狂犬病予防法により、犬の登録を行うことと年1回狂犬病の予防接種を受けることが義務づけられています。守らない飼い主には罰則が設けられています。
第二章 通常措置
第四条 犬の所有者は、犬を取得した日(生後九十日以内の犬を取得した場合にあつては、生後九十日を経過した日)から三十日以内に、厚生労働省令の定めるところにより、その犬の所在地を管轄する市町村長(特別区にあつては、区長。以下同じ。)に犬の登録を申請しなければならない。
出典:狂犬病予防法
迷子には絶対ならないと思うのだけど迷子札はつけないといけないの?
絶対に迷子にならないと思っていても災害などではぐれることもあります。
動物愛護法と環境省の告示で、ペットが逸走した場合、飼い主自らの責任において速やかに捜索し捕獲する義務があるとされています。そのため、万が一ペットが逸走してしまっても飼い主がわかるように迷子札やマイクロチップをつける義務があると言えるでしょう。
第七条
6 動物の所有者は、その所有する動物が自己の所有に係るものであることを明らかにするための措置として環境大臣が定めるものを講ずるように努めなければならない。出典:動物愛護法
7 逸走防止等
所有者等は、次の事項に留意し、家庭動物等の逸走の防止のための措置を講ず
るとともに、逸走した場合には、自らの責任において速やかに捜索し捕獲するこ
と。
(1) 飼養施設は、家庭動物等の逸走の防止に配慮した構造とすること。
(2) 飼養施設の点検等、逸走の防止のための管理に努めること。出典:環境省告示「家庭動物等の飼養及び保管に関する基準」
繁殖させるつもりはないので去勢(不妊)する義務はないですよね?
(犬及び猫の繁殖制限)第三十七条 犬又は猫の所有者は、これらの動物がみだりに繁殖してこれに適正な飼養を受ける機会を与えることが困難となるようなおそれがあると認める場合には、その繁殖を防止するため、生殖を不能にする手術その他の措置をするように努めなければならない。出典:動物愛護法