



もくじ
犬の問題行動の原因のほとんどが「社会化」ができていないことに起因する
犬のしつけにおいて「社会化」のしつけは最も重要です。社会化ってなに?という方も結構いらっしゃいますが、かんたんに説明すると「ワンちゃんを人間社会に慣れさせること」です。
犬が引き起こす「吠える」「噛む」「怖がる」といった問題行動の原因は、性格的な要因もありますが、実はこの「社会化」ができていないことが原因となっているケースも多くあります。
「吠える」「噛む」「怖がる」といった犬の問題行動の根底にはわからないものに対する不安や恐怖が根付いています。この不安や恐怖というのは物心がついてしまうとなかなか払拭することが難しくなってしまいます。
社会化適齢期に人間社会で日常的に起こるあらゆる場面に慣れさせる訓練をしておくことで、この不安や恐怖を払拭し、過度に刺激を受けない落ち着いた賢いワンちゃんに育っていきます。
つまり「社会化」は、飼い主さんがこれから十数年という長い期間一緒に暮らすワンちゃんとストレスのない生活を送ることにつながります。
ぜひ積極的にトレーニングを行ってください。
犬の問題行動を回避する「社会化トレーニング」に適した期間はわずかしかない
「社会化」をしつけるのに適したは期間は、生後3週間頃からはじまり、生後4カ月頃に終わると言われています。
感染症などを予防するワクチン接種を終えて獣医さんから散歩の許可が出るのはだいたい生後3ヶ月後半からになりますので、人間で例えると10歳ごろまで家の外に出さないのと同じことになってしまいます。
社会化トレーニングには室内で行えるものもありますが、飼い主さんが抱っこした状態で散歩に連れ出したり衛生面で問題のないところを歩かせるぐらいなら感染症を心配する必要はありませんので、ワンちゃんを家族に迎えたその日から社会化のために積極的に外に連れ出すことをお薦めします。
犬の問題行動を回避する「社会化トレーニング」の方法
社会化トレーニング1.いろいろな音に慣らす
社会化トレーニングの中でも特に重要なのがこの「音」に対する耐性をつけるトレーニングです。
- 「○○ 効果音」などでyoutubeで検索するといろいろな効果音がヒットするので、人の足音や犬の鳴き声、呼び鈴チャイムの音、玄関を開閉する音、掃除機、洗濯機の音、傘を開く音、車やバイク、電車、踏切の音など飼い主さんにとって身近な効果音を探してください。実際にスマホなどを使用し動画撮影して再生しても構いません。
- 音源を用意できたらおやつを準備してワンちゃんの遊び相手をしながら音源を再生してください。音量は気にはするけどおやつを食べたり遊びが継続できる程度の音量にしてください。
- 日ごとに実際の音量ぐらいまで徐々にボリュームを上げていきます。
- 音に反応しておやつを食べずに吠えたり、遊びが継続できない場合は中断し、ボリュームを下げて3に戻ります。
- 実際の音量ぐらいにしても反応しなくなったらクリアです。
音を発生させる機器はこちらがおススメ。
Bose SoundLink Mini Bluetooth speaker II
このスピーカーはうちでも防音テストに使用していますが、iPhoneやスマホとかんたんに接続(Bluetooth接続)できて、重低音が非常に良くかなり実際の音に近い音質を再現できます。
スピーカーはワンちゃんの見えないところに隠して使用してください。
社会化トレーニング2.人にさわられることに慣らす
わんちゃんの性格にもよりますが、人を怖がるわんちゃんも多く存在します。飼い主さんはもちろんのこと、家族や親せき、友人などできるだけ多くの人とふれあう機会をつくってあげてください。
社会化期に人に慣れておけば人に対して過度な警戒心をもちにくくなるので、威嚇吠えなどの問題行動を回避できたり、旅行の時など長期不在時に家族や親せき、友人、ペットホテルなどに預ける時も助かります。
慣らす方法としては「いろいろな人からおやつをあたえてもらう」のが理想です。
注意点として、怖がりのわんちゃんには配慮が必要です。協力者に犬の正面に立たず目を合わせないようにして近づいてもらうようお願いしてください。
おやつをあたえるときもはじめは飼い主さんからあたえ、問題なく食べるのを確認してから協力者にお願いするようにします。
社会化トレーニング3.首輪をつかまれることに慣らす
首輪をつかもうとすると逃げる、あるいは噛みつくなどの行動をとる犬も多く存在します。
わんちゃんが首輪をつかむことを嫌がってしまうと将来的に非常に困ることが多くなりますので社会化期に慣れさせておくことが重要です。
首輪をつかまれることを嫌がってしまう原因は、「首輪をつかまれると嫌なことが起こる」とわんちゃんに学習させてしまうからです。
たとえば、首輪をつかむ⇒ケージに無理やり閉じ込められるなどが該当します。
ですから、社会化期には首輪をつかんでも絶対に「嫌なこと」をしてはいけません。逆に「イイこと」が起こると学習させてください。
たとえば、首輪をつかんでリードをつける⇒おやつをあたえるなどです。
とにかく首輪をつかまれることに対してマイナスイメージを持たれないように注意してください。
社会化トレーニング4.抱っこや高いところに慣らす
犬は猫と違って高いところが苦手な子が多いです。
抱っこは犬にとっては高いところにつれていかれているのと同じことで怖がるわんちゃんも多くいますし、動物病院やトリミングのときなんかに高台に乗せられて恐怖を覚えてしまうことがあります。
高いところを嫌がるままにしておくと意外と困ることが多いので社会化期に克服させておきましょう。
順序としては
- 抱っこしたと同時におやつをあたえる
- 抱っこに慣れたら抱っこしたまま立ち上がって同時におやつを与える
- 嫌がらないようになったらテーブルの上などに滑り止めシートやタオルなどを敷き、おやつをおいてわんちゃんを乗せる
- しっぽが下がってたり震えている場合はあまり長時間継続はせず毎日回数を増やすことで慣れさせる
嫌がる時は無理に継続せず嫌なイメージをできるだけ与えないようにこまめにおやつを与えるなどして徐々に慣れさせてあげてください。
社会化トレーニング5.噛みつきの抑制を学ばせる
犬は自然界では兄弟とともに育ちますので兄弟との遊びのなかで噛みつきの抑制を学んでいきます。
ところがペットショップなんかにディスプレイされている子たちは生まれると同時に競りにかけられ出荷されますので兄弟と遊ぶという経験をしてないケースがほとんどです。
子犬には食欲と同じように「噛みつき欲求」という欲求を持っています。これは歯が生え変わるために必要な欲求で脳も刺激されるので脳の発達にも影響します。
この「噛みつき欲求」を満たしてあげるには、わんちゃんと遊ぶ際、おもちゃを使ってあげるのがベストです。
ひとり遊び用にはコングが有名です。
木のおもちゃなんかもおすすめです。
一緒に遊ぶときは、ひとつだけ注意点があります。
一緒に遊んでいてわんちゃんが興奮してきたなと感じたら必ずクールダウンさせることを忘れないでください。
可愛いあまりついつい飼い主さんも興奮を誘うような遊び方をされてしまう方も多いのですがそのままにしておくと条件反射的に興奮して興奮を抑制できないようになってしまいますのでよくありません。
引っ張りっこ遊びや取っ組み合いなど興奮するような遊びをしているときは興奮してきたなと感じたらおやつを与えたり「シッ」と掛け声をかけるなどで犬が落ち着くのを待ってください。
待っている間は手を出してはいけません。落ち着いたのが確認出来たら遊びを再開しても構いません。これを繰り返すことで興奮をコントロールできるようになります。
興奮をコントロールできるようになったらくわえたものをすぐ放すといった行動にもつながり噛みつきの抑制を学ぶことにもつながります。
社会化トレーニング6.外の刺激に慣らす
外の刺激に慣らすトレーニングはできるだけ早く行ってください。まずは外を眺める、次は玄関先、次は抱っこして家の周り、次は抱っこしたまま近くの公園と移動範囲を広げ徐々に刺激を与えるようにしていくといいでしょう。
獣医さんから散歩の許可がおりてからは次のことに注意してトレーニングに取り組むといいでしょう。
いろいろな素材の上を歩けるようにする
外にはマンホールや側溝のふたの上、足場の悪いところを歩くことも多々あります。一見、嫌なら歩かなければいいと思うかもしれませんが、苦手なものは社会化期にできるだけ無くしてあげることがわんちゃんにとって将来的にストレスに感じることをつぶしてあげることにつながりますので、一つでも多く積極的にトレーニングしてあげてください。
他の犬に慣らす
ドッグランやドッグカフェ、キャンプや旅行などにわんちゃんをつれていきたいと思っている場合はほかの犬に慣らしておくのは必須になります。
獣医さんから散歩の許可がおりる前でも健康診断をして感染症の危険性がないことが確認された子犬だけをあつめて交流させる、いわゆる ”パピーパーティー” やコース制の”パピークラス” などを行っているところもあります。
実績のある経験豊富なインストラクターが主催しているものが、もしお近くで開催していれば積極的に参加してください。
あまり実績のないペットショップなどが主催しているようなものは知識が乏しく管理が行き届いていないケースも多いので、他の犬が嫌いになってしまうなど逆効果となってしまう可能性もあります。注意してください。
ほかの犬と遊ばせるうえで注意していただきたいのは、「遊ばせることが目的ではない」ということです。
遊ばせるのはあくまで、ほかの犬を見ても興奮して我を忘れるなんてことがおこらないよう訓練するための”手段”であって”目的”ではありません。
遊んでいる最中に「おいで」などの掛け声で呼び寄せ、おやつをあたえ、遊んでいる最中であっても「飼い主のもとに戻るといいことが起こる」という体験をさせ、学習させることが目的です。
戻ってきたらここでも必ずクールダウンさせるのを忘れないでください。興奮をコントロールすることがここでも最終的な目標です。
乗り物に慣らす
犬連れで旅行やドライブなどをする場合や動物病院が近くにない場合などに車に乗せるなど、乗り物に乗せる必要がでてくることがあります。
乗りなれていないと乗り物酔いをする犬も多く、いざというときに困りますので社会化期に克服しておいた方がいいでしょう。
乗り物に乗せるトレーニングの順序は
- まず乗り物の音に慣らす
- クレートに入れる
- エンジンをかけない状態で車に乗せる
- 大人しくしている場合はエンジンをかけてみる
- 問題ないようであれば5分程度近所を運転してみて様子を見つつ徐々に距離を延ばしていく
クレートトレーニングについてはこちらの記事を参照ください。
乗り物は合わせ技なので難易度が高いですができるだけ挑戦するようにしてください。運転の妨げにならないよう面倒を見てくれる方が車内にいる場合はクレートから出していても問題ありません。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
「社会化」はしつけの基礎といっても過言ではありません。
社会化トレーニングに適した期間が短いのがこのトレーニングの難点ですが、タイミングを逃せば問題行動に悩まさられることになりますので愛犬を家族に迎え入れたその日からぜひ積極的にトレーニングに励んでください。
上記トレーニングを実践いただければ、きっと賢い愛犬に育ってくれることでしょう。