犬は加齢に伴い循環器疾患や腫瘍疾患の割合が増加することがアニコムの調査によって 明らかにされています。
出典: アニコム家庭どうぶつ白書2018
心不全や弁膜症などの循環器疾患は見た目だけでは分かりにくい病気のため飼い主さんのこまめな観察が早期発見の決め手となります。
老犬に多い病気のサインを少しでも知っておくと愛犬を救うことにつながりますので頭の片隅に置いておくようにしておいてください。
愛犬の症状から想定される病気
元気がないとき
突然いつもより明らかに元気がない時は発熱や貧血、何らかの痛みや体調不良が原因と考えられます。
発熱から想定される病気
感染症、熱中症など
低体温から想定される病気
衰弱、栄養不良など
痛みから想定される病気
骨折、関節炎、椎間板ヘルニアなど骨や骨格に起因するもの
消化管の炎症、胃捻転、尿道結石など
その他体調不良を引き起こすもの
肝機能障害、腎不全など内臓疾患によるもの など
持続的に嘔吐してしまうとき
食べ過ぎで胸焼けを起こしていたり、乗り物酔い、草を食べた後などに嘔吐することは一過性であることが多いです。症状が一過性の時は病気の危険性は低いと考えてよいでしょう。1日に何回もに嘔吐が続いたり、下痢や食欲不振などが伴う時は異常である可能性が高いため獣医に診てもらってください。
嘔吐が続く場合に想定される病気
重度の胃腸障害、胃内異物、伝染性疾患、胃捻転、腸閉塞、肝炎、膵炎、腎不全など
頻繁に咳をするとき
人間と違い犬は呼吸器がしっかりしているので風邪を引くようなことはめったにありません。もし咳が続くような場合は、重い病気の可能性がありますので早めに獣医に診てもらってください。
咳が続く場合の想定される病気
急性の場合
呼吸器感染症、気管支炎、肺炎など
慢性の場合
心臓疾患、フィラリア症、肺水腫など
呼吸が苦しそうなとき
運動の後にいつまでも息が上がっていたり、安静時にも呼吸が苦しそうな時は呼吸器や循環器の異常の可能性があります。また、夏の暑い時には熱中症の初期症状であることもあります 。暑い場所にいるときは日陰や涼しい場所に移動し水分補給をこまめにしてください。日中の暑い時間帯には出歩かないことをお勧めします 。
呼吸器疾患で想定される病気
気管虚脱、肺炎、肺水腫、気管支炎など
循環器疾患で想定される病気
心臓疾患、フィラリア症など
体重が急激に減ったとき
普段と変わらない食事の量を与えているにも関わらず体重が減ってくる場合は要注意です。見た目は健康そうに見えても重い病気にかかっている場合がありますので愛犬の体重チェックは欠かさず行いましょう。
体重減少で想定される病気
糖尿病、胃腸障害、消化管内寄生虫、膵外分泌不全、ホルモン異常など
お腹が腫れているとき
腫れているおなかの片側に手のひらを当てて、反対側をかるく叩いてみて、おなかの中に液体が動くような感触がある場合は腹水が疑われます。また食事を一日一回大量にまとめて与えていると家を固定している靭帯が緩み胃捻転を起こす可能性もあります。
腹水で想定される病気
腫瘍、フィラリア症など
老犬がかかりやすい病気と症状
腫瘍、がん
腫瘍は体のいたるところに発症が認められ、良性と悪性があり見極めるには腫瘍組織の一部を病理組織検査にかけます。 腫瘍ができた部位によって症状は様々ですが体に触ることで発見することも多く日比野マッサージはブラッシングなどが早期発見につながります。
悪性腫瘍の中で最も多いのはメス犬の乳腺腫瘍です。避妊手術をしていないメスは老犬になったら半数以上が発症すると言われています。
悪性腫瘍の場合は進行が早いため発見が遅れると数ヶ月で死に至ることもあります。見た目だけではわからないことも多いのでシニア期を過ぎたら定期的に健康診断を受け、早期発見・早期治療を心がけましょう 。
腫瘍疾患の症状
- しこりができる
- 便や尿に血が混じる
- 食欲不振になる、フードを食べない
- 元気がない、散歩を嫌がる
僧帽弁閉鎖不全症(そうぼうべんへいさふぜんしょう)
老犬の心臓疾患の大半はこの僧帽弁閉鎖不全症と言われています。トイプードルやチワワなど小型犬に多く見られます。遺伝的な要因もありますが肥満になると発症のリスクが高まります 。5歳を過ぎた頃から症状が現れることが多く、夜中や運動時に咳が出る、運動したがらない、疲れやすいなどの症状が見られ進行すると肺水腫や呼吸困難を引き起こします。
僧帽弁閉鎖不全症 の症状
- 咳が続く
- 運動や散歩を嫌う
- 疲れやすい
気管虚脱(きかんきょだつ)
肥満や首輪による喉の圧迫などが原因で、口と鼻から肺を結ぶ空気の通り道が押しつぶされて空気の流れが悪くなる病気です 。運動したり興奮した時にゼーゼーと喉鳴りがおき、ひどい時には呼吸困難のからチアノーゼを起こし失神します。 手術することによって一時的によくなることはありますが、再発する可能性も高く確実な治療法はないとも言われています 。
気管虚脱の症状
- 喉がゼーゼーとなる
- 息をするのが苦しそう
- いびきをかく
慢性肝炎
偏った食事やウイルスの感染によって肝臓が炎症を起こし慢性化した病気です。老犬の場合にはカロリーの高い若い犬用のフードを与えていても肝臓への負担がかかるため慢性肝炎の原因にもなります。初期の段階では症状が分かりにくく、悪化すると尿の色が濃くなったり、腹水や黄疸などの症状が現れます。
慢性肝炎の症状
- 尿の色が濃い
- 食欲がない
- 元気がない
糖尿病
犬の糖尿病はほとんどが膵臓からインスリンが分泌されなくなるインスリン依存症です。 一度発症してしまうと完治できないためインスリンを一生涯投与する必要があります 。糖尿病になる一番多い原因は肥満ですが、その他にも膵炎や遺伝性のものなど様々です。 悪化すると白内障や末梢神経障害などの深刻な合併症を引き起こす場合があります 。
糖尿病の症状
- 急激に痩せる
- 水を異常に飲む
- 尿の量が増える
慢性腎不全
腎臓は血液を濾過して老廃物を尿として排出する働きがあります。この腎臓の働きが低下することによって体内に老廃物が溜まり様々な支障をきたす病気が腎不全です。
ゴールデンレトリーバーやシーズー、ミニチュアシュナウザーなどに多く見られ、塩分やたんぱく質を過剰に摂取してきた犬が患う傾向にあります 。
慢性腎不全は目立った初期症状がほとんどなく 症状が現れた頃にはかなり進行しているケースが少なくありません 。急性の場合は数時間から数日で悪化し発見が遅れると尿毒素症をおこし死に至ることもある怖い病気です。
慢性腎不全の症状
- 水を異常に飲む
- 尿の量が増える
アレルギー性皮膚炎
老犬は免疫力が低下してくると細菌や寄生虫、花粉やハウスダストなどが原因でアレルギー性皮膚炎を起こしやすくなります。特に老犬に多いのは皮膚真菌症です。カビの一種である真菌に感染して肌に炎症を起こします。耳の中になどに広がると黒ずんで腫れ上がることがあります。刺激の少ないシャンプーやブラッシングなどで日頃から清潔を保つことが発症を予防することにつながります 。外で過ごす時間が長い犬はノミやダニを駆除する薬を定期的に使うようにしましょう。
アレルギー性皮膚炎の症状
- 湿疹ができる
- 皮膚を噛んだり舐めたり痒がる
前立腺肥大症
前立腺肥大症は去勢をしていないオス犬に多い疾患です。膀胱の後方にある前立腺が肥大して腸や尿道を圧迫し排泄が困難になる病気です。加齢によってホルモンバランスが崩れることが原因とされています 。排尿がうまくいかず膀胱炎や前立腺炎を併発する可能性があります。日頃から排泄時の様子を観察し 排泄に手間取っているようなら獣医さんに検査をしてもらいましょう。
前立腺肥大症の症状
- うんちが細くなったり便秘になる
- 尿や便の出が悪く排泄に時間がかかる
子宮蓄膿症
老犬に限らず避妊手術をしていない5歳以上のメス犬で、かつ出産経験がない場合に多く見られる疾患です。 細菌によって子宮内に膿がたまる病気で免疫力が下がる老犬にはリスクが高い病気です 。悪化すると腎不全や腹膜炎、多臓器不全を起こすことがあり治療が遅れると命に関わる場合もあります。
子宮蓄膿症の症状
- 陰部からおりものがでる
- 水を異常に飲む
- 尿の量が増える
白内障
目の一部または全体が白く濁る病気です。初期段階であれば点眼薬は内服薬で進行を遅らせることができますが放置すると失明することがあります。 原因は老化に伴うものであったり遺伝による先天性のものや、糖尿病、外傷などによる後天的なものなど多岐に渡ります 。目は比較的に初期段階で発見することができるため症状が現れたら早めに獣医に診てもらいましょう。
白内障の症状
- 黒目が白く濁る
- 物を目で追わなくなったり、物につまずいたり、ぶつかるようになる
歯周病
老犬になると唾液の分泌量が減少し細菌が繁殖しやすいため歯周病になりやすくなります。初期症状は口臭やよだれ程度ですが、悪化すると膿が溜まり歯が抜け落ちます。食事をとることが困難になったり、口腔内の細菌が血流に乗って腎臓や心臓、肝臓などの臓器に悪影響を及ぼすことがあり最悪、死に至ります。たかが歯周病と侮ってはいけません。 週に2、3回は歯磨きの習慣をつけましょう。
歯周病の症状
- 口臭がきつい
- 歯がぐらついたり、抜け落ちる