もくじ
食事の補助
高い所に食器を置いてあげる
老犬になると足腰が弱くなったり飲み込む力が衰えてしまうため食事の際は食器の下に台を置くなど食べやすい姿勢になるよう配慮してあげてください。台の上で食器がずれて下へ落ちないよう置く台の形や素材には注意してください。台はある程度重さがあるもの用意し、食器の下には滑り止めなどをひいてあげるとよいでしょう。100円ショップなどでも入手することは可能です 。
上体を起こして食事を与える
寝たきりの場合、横になった状態で食べさせるとフードを戻してしまう可能性があります 。立って食べるのが難しい場合は優しく状態を起こしてあげてから木製のスプーンなどを使ってゆっくり食べさせましょう。
アゴを持ち上げすぎない
アゴを持ち上げて上を向いた状態でフードを与えると気管に入ってしまう恐れがあり大変危険です。 上体を起こした後、顎をすこし下げた状態であることを確認し、口の横から少しずつフード与えてください。
1回の量を減らし回数を増やす
シニア期になると代謝が落ちてくるため摂取できるカロリーの上限がどうしても落ちてきてしまいます。肥満防止のためフードの量は減らしていかないといけませんが、突然減らしてしまうと空腹が犬にとってストレスになってしまいます。そこで全体の量は下げつつも食事の回数を増やすことで空腹感を紛らわせる工夫をしてあげましょう 。
排泄の補助
オムツを使用する
老犬になってトイレの失敗が続くようならおむつを使用しましょう。衛生上よくないという意見もありますが 近頃のおむつは吸収性が良く通気性にも優れているため 多少気付くのが遅れても大丈夫です。 ペット用のおむつが 近くに売ってない場合は、人間用のオムツをしっぽの部分に穴を開け、代用することも可能です。小型犬には幼児用のオムツを、中型犬から大型犬には成人用のオムツを使用してください。
排泄時に手やハーネスで支える
中型犬から大型犬は体重が重いため、足腰が弱るとうんちやおしっこをする際に姿勢を維持することができず うんちやおしっこの上に座り込んでしまうことがあります。それを防ぐために背後から両手で姿勢を維持できるよう支えてあげましょう。
寝たきりの場合の排泄補助
老犬は肛門周りの筋力が低下して排便力が下がったり腸の動きが弱くなって便秘になるケースがあります。
犬のお腹の上から大腸のあたりを触ると便がたまっている所が分かるので皮膚のうえから指で肛門の方に押し出します。おしっこがたまっている場合は膀胱が硬く張ったような状態になります。オスの膀胱は後ろ足の付け根よりも前の方メスはやや後ろの方にあります。尿を押し出すように膀胱圧迫してあげてください。
初めは難しいかもしれませんので獣医さんからアドバイスしてもらうといいでしょう。また、食事を普通にとっているのにどうしても2、3日うんちが出ない場合、ガスがたまって腹痛などの原因にもなりますので獣医さんにみてもらい早めに対策をしましょう。
床ずれに注意する
寝具はクッション性の高いものを使用し時々寝返りをうたせる
床ずれとは長時間同じ箇所に体重がかかることで血の巡りが悪くなり皮膚組織が壊死する疾患です 。一度発症してしまうと完治するまでに長期間かかり、放置すると壊死が奥まで進んで骨が見えるようになったり細菌に感染して症状が悪化することがあります。当然痛みを伴うため夜泣きなどの原因にもなりかねませんので細心の注意が必要です。
床ずれの出来やすい部分は肩甲骨や腰などの骨が出っ張ったところです。 特に中型犬から大型犬は床ずれを発症しやすくクッション性の高い寝具は必須です 。2、3時間おきに寝返りを打たせるのが理想ですが、どうしても難しい場合は低反発やハニカム構造のマットレスを十分に使用し、床ずれができやすい肩甲骨や腰などに関しては、前もって市販されている床ずれ予防の保護材などを使用するといいでしょう 。
fa-warning注意
食後すぐ寝返りを打たせるのは危険です。食後に寝返りさせると食べたものが逆流して嘔吐することがあります。食後1時間程度は空けるように心がけましょう
床ずれができてしまったら
- 傷口の汚れをぬるま湯につけたガーゼなどを使って丁寧に取り除く
- 細菌感染防止のため傷口の周りの毛をバリカンなどで刈る
- 傷口が乾燥すると治りにくいため保湿効果のある市販の床ずれ専用クリームなどを塗る
- 吸水性のない食品用のラップなどを傷口に貼る(※)
- ラップの上からペットシーツを重ね包帯で優しく巻止める
※ ガーゼを傷口に貼ると傷口から出る浸出液がガーゼに染み込んでしまうため潤いが保てなくなり治りにくくなってしまいます。誤った処置をされている方が多いのでご注意ください。
動けない老犬の移動方法
抱っこで移動させる場合
足腰が弱って自力で立ち上がることができない中型犬用大型犬は抱きかかえて移動させます。慎重に行わないと飼い主さんが腰を痛めたり 抱きかかえ方が甘いと犬を床に落としてしまう危険性もあります。そのような事態を避けるために正しい抱え方をマスターしておきましょう。
抱き上げ方
- 横になっている犬の背中側からお腹の下に手を入れる
- 片膝を立てて犬の上体を起こす
- 腰の力を使わずに足の力だけを使って垂直に立ち上がる
おろし方
- ゆっくり片膝をついてしゃがみ、もう片方の立てたてたひざの上に犬をゆっくり下ろす
- 犬のお腹に手を回したまま 犬の背中が外側になるようゆっくり倒す
- 犬が床に横たわったら手を抜く
即席担架やハーネスで運ぶ場合
病気の症状が急に悪化した場合などはできるだけ体を動かさないようにして動物病院に搬送する必要があります。担架の代わりに大きなタオルや毛布上着などを使って二人一組で両端を持ちゆっくり運びましょう 。焦って犬を落とすことのないようにできるだけ犬の体の近いところを掴むようにしてください。
寝たきり老犬のお手入れ
寝たきりになった老犬はとにかく清潔をたもつための定期的なお手入れが欠かせません。特に大型犬だと飼い主さんが一人でシャワーをしてあげるのは容易なことではありませんが、うんちやおしっこなどで体の汚れがひどい場合などは、できるだけ早くシャンプーをして皮膚のトラブルを防ぐ必要があります。
どうしてもシャンプーが難しい場合はウェットティッシュなどを使い部分的でも構わないのでこまめにお手入れをしてあげてください。ウェットティッシュなどではどうしても取れない汚れは大きめの洗面器などにお湯を張って部分浴させる方法もあります。
シャンプー後はタオルで水気を十分とってから低温のドライヤーで素早く乾かしてあげてください。
痴呆症・認知症には早く気づき進行を抑えるのが重要
認知症は放っておくとどんどん進行してしまい治すことは今の医学では困難とされています。しかし、その症状に早く気づき適切な処置を施せばある程度進行を遅らせることができるとも言われています。次のような症状が見られる場合は できるだけ早く獣医師に相談しましょう。
- 昼夜逆転し夜中動き回ることが多くなった
- 夜泣き(夜鳴き)をするようになった
- 寝ながら排泄をしたり起きている時も排泄の失敗が増えた
- 名前を呼んでも反応しない、目の焦点が合わない
- 同じ場所をぐるぐる回り 部屋の隅に頭をつけたまま挟まって動けなくなる
- しつけで出来ていたことができなくなった
- 食欲旺盛で与えれば与えるだけ食べるようになった
これらの症状はあくまで認知症の行動例で認知症であるというわけではありません。他の病気が原因でトイレの失敗や痛みを訴えて夜泣きをしている可能性もあります。
飼い主さんの判断で「もう年だから」と諦めるのではなく、愛犬の様子を注意深く観察し気になる行動が現れたらできるだけ早く獣医師に相談してください 。
小型犬だと10歳、中型犬から大型犬だと8歳を過ぎた頃から予防と対策が必要です 。 認知症はゴールデンレトリーバーなどの洋犬にはあまり見られませんが柴犬などの日本犬は 発症しやすい傾向にあります。